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■ 近藤誠氏の「抗がん剤はきかない」について

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抗がん剤は効かないか
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 文芸春秋の平成23年1月号に、放射線科医師近藤誠氏が「抗がん剤は効かない」という記事を載せました。それを読んで、驚き、がっかりし、また悩んだ方が多いと思います。

 近藤医師は、EBM原理主義者のような人です。EBMとは、文句のつけようがない臨牀実験結果に基づいた医学ということです。現在まで発表されている抗がん剤の効果は、白血病のような血液がんと少数の固形がんには有効というEBMがありますが、一般の固形がんでは効くというEBMが無いというのです。固形がんというのは、肺がん、胃がん、乳がんのような塊をつくるがんです。

白血病では、通常、がん細胞が1個1個ばらばらで血中にありますので、血中の十分な濃度の抗がん剤とよく接触し、抗がん剤が効きやすいのです。さらに、がん細胞と一緒に血液をつくる細胞(血液がんの基となった細胞とその仲間)も全滅させ、その後、骨髓移植といって他人の血液をつくる細胞(ただし白血球の型が合うもの)を移植させる治療まであります。それに対し、固形がんでは、十分な濃度の抗がん剤が、塊となったがんの隅々まで届きにくいのです。

それでも、抗がん剤が良く効いた固形がんの例はいくらでもあります。「いのちの落語」の著者であり、がん患者に落語を聞かせ元気づける会を開催している樋口強氏は、1996年、肺がんの中でも最も悪性である小細胞がんにかかりました。決意して、すさまじい副作用の抗がん剤治療(現在では副作用をもっと軽くする方法があります)を耐え抜き、手足の強いしびれという後遺症を持ちながら現在まで10年以上生存されているのですから完治といってよいでしょう。肺の小細胞がんがいかに悪性かよく知っている医師の目から見たら、まさに地獄からの生還です。

しかし、近藤氏は、このような例をいくら並べてみても、同じ治療をしたにもかかわらず、一時的に良かったがその後再発や転移を生じた例、無効例、抗がん剤治療の副作用でかえって命を縮めた例などもあり、これらを全部集め統計をとり、生存期間を比較すると、この治療を受けなかったグループと同じか、時にかえって悪いというのです。統計を意識的に操作しているという話についてはここでは論じません。100円だして宝くじを買っても、戻ってくるお金は平均すれば50円以下だから宝くじなど買うなと言っているようなものです。それでも億の金が当たる人(上記の樋口強さんのような人)がいるのですから、宝くじを買う人が居てもそれを馬鹿なことをすると笑えません。まして自分の命のことですから、少しでも可能性があれば、それにかける人が居ても当然です。抗がん剤治療は、高率に効くわけではありませんが、宝くじに当たる確率よりは高いでしょう。週刊文春(2011.1.20)でも、がん治療専門医が、抗がん治療は効いていると近藤氏に反論しています。



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抗がん剤治療を選ぶかどうかは自分で決める
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固形がんに対し抗がん剤が効くというのは、確かに誰もが納得するようなめざましい効果はでていません。月単位の延命効果があるか、無いか論争している段階です。しかし全体では統計的効果がなくとも、個々には効果があった例というのもあるのです。現在の医療は、医者におまかせではなく、自分が自己責任において選択するようになりました。ですから、そのような状況を理解したうえで、うまくゆくという期待をもち、同時にかえって命を縮めるかもしれないという覚悟をもって、つらい抗がん剤治療(なかには全く副作用のない人もいます)をするか、それとも治療をしないで残された時間を有効に使うか、すべて自分の判断にまかされているのです。

新しいEBMのある治療というのは、ある日突然完成されるものではありません。少しでも良い結果が得られたら、どのような症例が良かったのか、またどのような症例が悪かったのか調べ、さらにその原因は何か研究し、その結果を次ぎの治療に生かすというプロセスの連続が新しい治療を生み出すのです。白血病でも最初は抗がん剤治療の結果は悲惨でした。新しい治療薬の開発と上記のような段階を経てやっとほぼ確立され、比較的安全なEBMのある標準治療ができたのです。ですから、抗がん剤が効かないと言われていた初期の段階で治療を受け、うまくいって助かった例があり、それが少しずつ増え、いつのまにか標準治療となったのです。抗がん剤が効かないと言われた時代に、抗がん剤で助かった例があったのです。

確かに現在の固形がん治療は完成されたものではありません。また、がんの種類によって抗がん剤の効き方が異なります。良い結果が得られるよう、治療医が日々工夫を重ねている段階です。確実な効果が言えるまで、待つことができればよいですが、待つ時間はありません。くりかえしますが、がん患者は今現在つらい選択をせまられているのです。少しでも希望があるなら苦しい抗がん剤治療を受けるか、何もしないで残された時間を有効に使うか、自分で決めなければいけません。

ただし、抗がん剤治療を受けると決めた場合、特に最近開発された薬を使うのであれば、予期せぬ副作用が起こることを覚悟しなければいけません。抗がん剤は、がん細胞にとって猛毒ですが、ある種の正常細胞にとっても猛毒なのです。最近のがん遺伝子標的の抗がん剤であっても、どこかの正常細胞に似たような遺伝子があって、攻撃を受けた場合、予期せぬ副作用がでることになります。新しい治療方では、副作用が全てわかっているわけではありません、思いがけない副作用は、最初から覚悟しなければいけません。世の中に利益だけあってリスクの無いものはないのです。医療も同じです。近藤氏は、固形がんに対する抗がん剤治療まだは完成されたものではないと言っているだけです。


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近藤医師のすすめ
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文芸春秋3月号に、氏のすすめるがん治療の記事が載りました。しかし、これを読んで元気付けられた人はいないでしょう。ようするに、がんと戦うな、がん検診はむだである、小さいがんが見つかっても治療するなというのですから驚きです。

どんな大きながんであっても、最初は小さかったのです。小さいうちに見つかったがんが、転移をしない「がんもどき」か、転移をする「本物のがん」かを区別する方法は今のところありません。がんは倍々ゲームで大きくなります。倍になる時間が長ければ、何年かあるいは10年以上小さいがんの状態でいて、ある程度の大きさになると、その後は急速に大きくなります。y=x²およびその積分のグラフを思い出してください。毎日、前日の倍量の米をもらう約束をすると、最初は米1合だったのが、1ヵ月後には米蔵単位の量になる話を聞いたことがあるでしょう。さらに、成長が抑えられていたがんが、何らかのきっかけ(おそらく免疫能の低下)で急速に大きくなることもあります。

がんの大きくなる速度は1個のがん細胞が2個に分裂する時間(doubling time, 倍化時間)で決まります。最初に述べた肺がんの小細胞がんは倍化時間がきわめて早く、あっというまに大きくなります。このようながんをきわめて悪性といいます。一方、倍化時間がきわめて遅いものもあります。このようながんを持っていても、がんが大きくなる前に、本人の寿命の方が先に来てしまいます。このようながんが「がんもどき」と言われるわけです。自分のがんの倍化時間がわかれば、対策がたてられますが、まだそこまで言える段階ではありません。がんの種類によって倍化時間すなわち成長速度はずいぶん違います。

発育の遅いがんの典型が、前立腺がんです。このがんにはPSAという腫瘍マーカーがあり、簡単に測定できます。この値が非常に高ければがんとして治療されるでしょう。正常より少し高めの場合は、恐らく様子見となり、定期的にPSA値を測り、高くなったらその時点でがんかどうか調べることになるでしょう。

大腸がんは、ポリープと呼ばれる大腸内側からでる小さな突起から発生するものが多いようです。何年か経って症状をだすほど大きくなります。大腸内視鏡検査でこのポリープは簡単に取れます。ポリープができやすい人でも、1年〜数年に1回の大腸内視鏡検査の時にポリープを取れば、がんの芽をつむことになります。

胃がんの健診は、ピロリ菌とペプシノーゲン検査の結果で、胃内視鏡検査を毎年〜3年ごとに行ったほうが良い人と、全然やらなくとも良い人と分けています。胃内視鏡で見つけることのできるきわめて初期のがん(胃粘膜に限局したがん)は切除すればほぼ100%完治します。

がんは小さいほうが転移している可能性が少なく、完治しやすいし、後遺症も少ないのです。ですから私はがんが小さいうちに見つかる可能性の高いがん健診をすすめます(一般のドックではオプションになります)。健診で小さいがんが見つかり、後遺症無く取り除ければ完治の可能性が高いのですから、たとえそれが「がんもどき」であったとしてもいいではないですか。それでも治療をしたくない人は、自分のがんが「がんもどき」か、「本物のがん」か、近藤先生に診断してもらえばよいでしょう。


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漢方によるがん治療
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 漢方によるがん治療の場合はどうでしょうか。近藤氏はEBM原理主義者ですから、EBMの無い医療を認めません。漢方には、ほとんどEBMがありません(無いのではなく、EBMを言うような臨牀データを集める研究をしていないだけ)から、認めていません。漢方とEBMの話は別の問題なので、ここではくわしく述べませんが、西洋医学で治らなかった病気を漢方で治している漢方医は、2000年の間効果を認められてきた漢方に、EBMという勲章はあってもなくてもかまわないと思っています。EBMの無い治療は受けないという選択も、どうぞご随意にと言います。

がんが残っている患者で、抗がん剤治療に加え漢方薬の十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を投与した群は、この薬を飲まない群より長生きしたという報告はありますが、がんの種類、ステージ(がんの進行度)、年齢等々を合わせて比較した研究はまだ少なく、EBMを言うにほど遠い状況です。

 十全大補湯の効果は免疫能を高めることによると考えられます。当院では、免疫能を高める生薬以外に抗がん作用のある生薬を使い、西洋薬治療を行っている場合は、それに上乗せをする効果を狙っています。食欲不振や肝機能障害がある場合は、それに応じた薬を追加します。再発を繰り返し、そのつど抗がん剤を変えていたけれど、もう使う薬は無いと言われたり、衰弱がひどくて抗がん剤が使えないなどと言われることがあります。そのような人でも、漢方薬は使えます。副作用はほとんどありません、あっても重大なものではありません。一般の漢方による重大な副作用も報告されていますが、漢方専門医が起こした例を聞いていませんので、専門知識の無い医師が使い方を誤ったためではないかと思います。

EBMだけに頼る医療は、統計だけを見て、苦しんでいる病人を診ない医療と言えます。いわゆる「がん難民」を大量につくりだすだけです。漢方はその対極にあって、苦しみがあれば、あきらめることなく何らかの治療をほどこす医療です。



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