耳鼻咽喉科
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急性中耳炎と慢性中耳炎
小さい頃の中耳炎の経験を覚えている方は多いでしょう。急性中耳炎は、こどもの病気の中でも多いものの一つで、熱が出て耳が痛くて眠れないという病気です。たいていは、風邪症状が先行し、耳だれが出ると痛みはおさまり一週間位で良くなるもので、ちゃんと治療をすれば後には何の障害も残しません。
のどから耳管を経て細菌が中耳まで入ったためにおこることがほとんどです。しょっちゅう風邪を引いて、そのたびに中耳炎で、時には鼓膜を切って膿を出した、という苦い思い出を持つ子供も、小学校に入学するとめっきり中耳炎の頻度が減り、中学に入ってからはもう中耳炎にはかからなくなったでしょう。
だからといって放っていて良いとは限りません。急性中耳炎に続くもの急性中耳炎を繰り返していると、鼓膜の内側にミズ(惨出液)がたまっていて空気が入らない滲出性中耳炎になります。
元々滲出性中耳炎が有り、時々そこにばい菌が入ってふえ急性中耳炎になることも少なくありません。滲出液にはばい菌がほとんどいないので、いつの間にか溜まるミズの量と位置によって軽い難聴になる以外はほとんど症状はありません。風邪をひくとこのミズが急に増え、シクシク痛むことがありますが、痛み止めの薬ですぐ良くなります。幼年時代の滲出性中耳炎は側頭骨の発育を阻害するので、成長して滲出性中耳炎はなくなって正常な鼓膜になっても含気腔の小さい大人の中耳腔になります。このとき中耳に空気が入らずに良くなると、癒着性中耳炎といって、鼓膜が内側にくっついた状態になります。
どちらの場合も中学生になると難聴も耳だれもないので耳のことは忘れがちですが、気圧の変化に弱い耳になります。忘れた頃に、いつの間にかきこえが悪くなったり、耳だれが出たり、耳垢がふつうではない臭いがしたら、真珠腫性中耳炎になっていることが多いので、すぐ医師の精密検査が必要です。
中学生になって新たに起きやすい急性中耳炎に、EBウィルスやマイコプラズマによる中耳炎があります。幼少時に家族からうつっていない子がうつっている子に接触するとおきる非細菌性の中耳炎です。
補聴器について
補聴器に不満をもっている人が多いのは何故?
(1)耳に合っていない。度の合わない眼鏡をかけているようなもの
(2)過度の期待
のどちらかです。(1)は専門家による調整で、(2)は正しい理解で改善できるでしょう。
どんなに良い補聴器を使っても、神様からさずかった耳にならないことはおわかりいただけるでしょう。使い分けと、聴く意欲で、コミュニケーションに、また音のある楽しみを手に入れられるはずです。
使わなくても劣化します、寿命は5年。
コンビニ力レーに帝国ホテルの味とサービスを要求していませんか?
毎日使えば、1日100円、365日5年で182,500円
耳は、眼と違って、四六時中情報をとり込んでいます。聴きたい時だけ耳につけるのではなく、1日中つけていてこそ、補聴器は役に立つものです。
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補聴器外来
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目的:聴覚管理(難聴の評価)と、役に立つ補聴器の普及
対象者:
(1)時にききとりにくいことがあり、補聴器を試してみたい方(紹介・試用・導入)
(2)今補聴器を持っているが、不満のある方(評価と調整)
(3)今補聴器を使っていて、補聴器・耳のチェックを希望する方(検診)
完全予約制:初回30分、再診15分、定期検診30分、その他小トラブル5分
初回:耳鼻咽喉科的診察ときこえの検査
2回目:補聴器の説明・試用、必要な時は耳穴型取り
3~5回目:1~2週間調整しながら使ってみる
役に立ちそうならば、きこえの評価をして、購入していただく。
既に持っている場合は、それを使用状態で評価、購入店に調整を指示します。
常に補聴器を使っている方は、年に1~4回きこえと器械のチェックをいたします。
めまいについて
メニエール病という名を聞いたことがある方は多いでしょう。「めまい」は昔、脳卒中の一状態と考えられていました。その当時メニエール先生は、内耳だけが悪くてもめまいがするのだ、という説を何度も主張し、めまい発作の直後に亡くなった方の内耳の解剖結果まで示した結果、その説はやがて一般に認められるようになりました。それで彼をたたえて、めまいと難聴の発作を繰り返す内耳の病気がメニエール病と名付けられたのです。
しかし今でも、めまいは脳卒中の始まりではないかとおそれている方が多いようです。めまいと一緒に物が2つに見えたり、声が嗄れたり、むせたり物を落としたりしたら、めまいが治まっていてもすぐに脳神経外科のある病院に行ってください。
めまいだけだったり、耳鳴り・耳のふさがった感じや、ふらつき・吐き気など乗り物酔いの様な症状と耳の症状だけならば、メニエール病とは限りませんが、内耳の病気のことがほとんどです。命の心配はありません。内耳からくるめまいは、文字どおり眼が回っています。だから眼の動き方をめまい平衡神経を得意とする医師が見ると、何故めまいがしているのか判ることが多いのです。その場でわざとめまいを誘発して、順に体位を変えて、それでめまいが良くなることがあります。それは良性発作性頭位めまい症という内耳の病気です。
めまいを再現できないと、診断は難しくなりますので、予防も治療もむずかしいのです。めまいが治まって1週間以上たつと、めまいの余韻も無くなり、診断はできないことも多くなります。何をしている時にどんなめまいがしてどうなったか、順を追って思い出してみることが診断を助けます。
高い所の物をとったり、洗濯物を干す時ぐらっとする眩暈は頚の血管が狭くなっているためかもしれません。そんなとき、頚の骨や血管を調べると細くなっているのが見つかることがあります。
いつの間にか片耳が遠くなっていて、大分経ってからふらつきが出てきたら、聴神経腫瘍という良性の脳腫瘍かもしれません。造影してMRIを撮るとすぐ判りますが、細かく切らないとMRIの画像(スライスといいます)の間で飛び越えて映らないこともあります。
診断するのは医師の仕事です。正しく診断してもらうには、必要情報を提供する必要があります。
時系列に整理してメモしていくといいでしょう。
前にも同じようなめまいを経験していればなおのこと、症状がすっかり無くならないうちに、なるべく早くできれば2-3日中には医師に相談することです。突発性難聴という病気ではすぐに治療を始めたかどうかが難聴・耳鳴りという後遺症を残すかどうかに影響します。そんなにはっきりぐるぐる回るわけではない、耳は変ではないが何となくおかしい、ふらつく、気持ち悪い、地震かなと思うとすぐ良くなるなどの場合は、まず内科で貧血その他全身を見てもらうことを勧めます。
めまいの治療
めまいの治療 (1)はじめに
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「めまい眩暈」はどうして起こるのでしょう?
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昔は脳卒中の一状態と考えられていました。メニエール病の元になったメニエール先生は、内耳だけが悪くてもめまいがするのだ、という説を初めて主張してやがて一般に認められるようになりました。
脳卒中の一種なのか、内耳のせいなのか大違いですが、診断するのは医師の仕事ですが、根拠(所見と言います)がないと病名を決められません。診断名によって治療法も変わりますから、症状がすっかり無くならないうちにめまい平衡神経を得意とする当院の医師に相談する方がよいのです。
どんな治療をするのでしょう?
まずは診てもらう目的(治療の対象)を整理してみましょう。
今のめまいをとにかく止めて欲しい(めまいそのものを治療)
ふらつきを何とかしたい(平衡障害を治療)
まためまいがするか、脳卒中の前ぶれかと不安(不安をとる)
もうあのめまいがしないようにして欲しい(めまいの予防・原因治療)
脳腫瘍や卒中の前ぶれではないか調べてほしい
のどれかでしょう。1~3を対症療法といいます。診断名によりかわるのは4の原因治療だけです。原因を探りながらも1~3の対症治療を始めます。めまいはもう治まった、原因を知りたいという4の方は、問診からめまいの原因となった病気をいくつか推定して、検査をします。一度ですべてのわかる検査はないので、可能性の大きい病気と診断するための検査、肉体的・精神的・経済的な負担の少ない検査から始めます。重大な病気ではないことを確認するための検査も必要ですが、すべての人にMRIをしていては医療費はパンクします。
以下、具体的にはなしをすすめましょう。
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めまいの治療 (2)めまいそのものの治療
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どんなめまいかにより治療法も違います。
少しでも動くとひどくなるがじっとしていても感じている回転性の強いめまいは、吐き気も伴い、飲み薬はうけつけません。そんなときはめまい止め・吐き気止めの薬を注射(点滴)するしかありません。食べられないのに吐くので補液(たりない水分と電解質を補うこと)も必要です。そんなめまいが48時間以上続くことはないので、3日目には吐き気があってもそっと(=頭を動かさないで)食べてみましょう。
食べられれば、めまい止めの薬を飲むことが出来ます。副作用としての眠気やだるさがあっても強い鎮暈剤(*)が必要です。これらの薬が効く状態は数分から数日、2週間以上続くことはありません。強い眩暈がしたときだけ飲むのみ方(頓服)もあります。
枕に頭をつけるときなど、動いた後だけで3分以上は続かないめまいは、つらくても動くことが治療になることが多いです。作用のある動き(理学療法)をするにはめまい平衡神経を得意とする医師の指導が必要です。めまいがしているときには眼が動いているので、この眼の動きを見ると、どんな動きが作用があるか指示できるのです。自宅でめまい体操をする場合は強い鎮暈剤をのみながら行うとよいでしょう。
いつも何となくフワフワして不安定、傾いている感じ、時にぐらっとくるなどはもっと弱い鎮暈剤(**)を数週間続ける必要があります。めまいは数千年の昔から知られていた症状で、漢方薬(***)も色々あります。めまいそのものではなく、首の凝り・頭痛・舌の色・胃腸の弱さ等々のあわせ持つ症状によって使い分けるので、漢方薬に詳しくない医師の処方は必ずしもよく効くとは限りません。効かないときは別の漢方薬に変えてみると良いのです。
* 強い鎮暈剤 :トラベルミン・ドラマミン・ドグマチール・プレドニンetc
** 弱い鎮暈剤 :メリスロン・イソバイド・トリノシン・セファドール・ケタスetc
*** 漢方薬 :半夏白じつ天麻湯・五苓散・柴苓湯
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めまいの治療 (3)平衡障害を治療
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原因が内耳にしろ脳にしろ、めまいの起こる前の生活に戻すことが治療のゴールです。端的には歩くことです。体のバランス機能がくずれた状態が平衡障害です。バランス機能は内耳だけでなく、視覚・手足の触覚・首や体や手脚の筋肉などいくつもの感覚・機能が協力しています。一つ二つの機能の低下は、他が代わりをしてくれるとあたかも元の健康に戻ったようになりますので、リハビリによりバランス機能をよくすることが大切です。
ただ、リハビリテーションにと階段の上り下りをして、階段から落ちてしまっては元も子もありません。入院して心不全がよくなって、家に帰ると悪くなることを繰り返す方が、団地の4階に住んでいたので、1階に引っ越してもらったら心不全を起こさなくなった、という例もあります。体力・筋力の限界を超えてはだめなので、体の声を聞きながら、徐々に訓練する必要があります。改善する速さは、人により年齢により大変異なります。
めまいの症状を見ながら、患者さんに合わせたアドバイスをするのが医師の仕事です。もちろん良くなる方もたくさんいますので、良くなる信じてリハビリをすることです。
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めまいの治療 (4)不安を和らげる治療
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めまいがして不安になるのは当たり前です。血圧も、測ってみると高いのに驚くかもしれません。元々高い人はますます高くなります。普段血圧は正常でも、血管の硬い人(動脈硬化症)はひどく上がります。それがますます不安を強くするでしょう。心配で眠れないと余計血圧が上がります。こんな時は血圧を下げる薬でなく、不安を和らげる薬を飲むと血圧も下がるのです。
不安による症状は見えないことが多いので、訴えないとあまり不安がないと思われて薬がでないこともあります。体の発する不安症状を無視するのもめまいの改善を遅らせ、また再発しやすくするでしょう。耳からくるめまいで知られるメニエール病の方は、体の発する不安悲鳴を無視する(気が付かない)方が多いので、私は、メニエール病の方のめまい発作には抗不安剤を出すことにしています。
いくつもある抗不安剤の副作用(眠気・だるさ)はまた個人差が大きいので、自分に合う抗不安剤を知っているのも良いことです。そして、薬の助けを借りてでもゆっくり休むことが大切です。
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めまいの治療 (5)再発の予防または原因治療
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長い目ではこれが大切です。病院の「めまい外来」はほとんどこのためにあると言っても過言でないでしょう。だから、説明もなく、色々検査して待たされたあげくに、めまい外来に回されることが多いのです。めまいの治療(1)「はじめに」~(4)「不安を和らげる治療」をしながら同時進行で検査もでき、急性期の治療が終わったときに(5)「再発の予防または原因治療」にはいれるのが望ましいです。しかし、患者さんの地理的・時間的制約、医師の人的・設備上の制約から、前述の(1)から(5)へと順を追って治療されることがほとんどでしょう。
めまいの原因が分かった時こころが軽くなるのは、
同じようなめまいはもう来ないといえる、
また同じようなめまいがしないようにできる、
同じようなめまいがしても対処できる、
からでしょう。めまいをおこす病態(病気)は50位あります。どんな医者でも10くらいは知っているでしょう。一般の方でも以下の7つくらいは知っているとよいです。それぞれの病気についての詳しい説明はインターネットの検索エンジンでキーワードに入れればたくさん出てきます。玉石混交ですが、読み比べれば玉と石の区別はできるでしょう。
1に属する病気:前庭神経炎・突発性難聴・良性発作性頭位めまい症
2に属する病気:内耳炎・耳性めまい症・椎骨脳底動脈不全症(小脳梗塞・脳梗塞を含む)
3に属する病気:メニエール病・良性発作性頭位めまい症
2・3は、めまいを繰り返す病気です。繰り返すと言うことは一度のめまいで大きな傷が残らずに改善するということを意味します。骨折や心筋梗塞のような元に戻らない変化ではないという点で好ましいことでもあります。
繰り返す理由は、内耳または脳幹部の血流不足と、内耳のむくみ(=内リンパ水腫)です。内耳の血流は後下小脳動脈の枝なので、脳血流増加という面では内耳と脳幹を区別する必要は有りません。良性発作性頭位めまい症は癖になる病気ではありません。繰り返すときは耳石がこぼれやすくなった一種の加齢現象と考えられますから、内耳の血流を良くすることが再発予防につながります。血の巡りをよくするには、血管を広げる・血液をサラサラにする・血液にたくさんの酸素を含ませることです。コレステロールが貯まるのを防ぐのも必要です。
要するに、血の巡りをよくすること、無理をしない(ストレスを貯めない、体の悲鳴を聴く、自然の摂理に従う)ことです。
まずはお気軽にご相談・お問い合わせください
TEL:03-3387-0893(8:30~11:30、14:30~17:30)
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